【ボートを漕ぐ税理士通信(ボー税通信) VOL.373】 富裕層のやりすぎた租税回避スキーム敗訴確定
富裕層の租税回避スキームがまた一つ最高裁で敗訴確定しました。
この事案は次のようなスキームです。
①相続開始3年半前に信託銀行から6億3000万円を借り入れ、都内の共同住宅(①不動産)を8億3700万円で購入。
②相続開始2年半前に信託銀行から3億7800万円、親族から4700万円を借り入れ、神奈川県の共同住宅(②不動産)を5億5000万円で購入。
③平成24年6月に相続が開始し、相続人は財産評価基本通達に基づき①不動産を約2億円、②不動産を約1億4000万円と評価し、購入時の借入金を差し引いて相続税を0円と申告。
これに対し税務署は平成28年4月、①不動産は鑑定評価額7億5400万円、②不動産は鑑定評価額5億1900万円として相続税の更正処分等を行いました。
納税者側は「財産評価基本通達」に基づいて計算した評価額が認められないのは平等原則に反するとして争いましたが、最高裁は「財産評価基本通達」による評価額と実際の市場価格との乖離が大きかったこと(このスキームが無ければ相続税の課税対象額は6億円超でした)、納税者側が意図的にその乖離を利用した借入・購入を行ったと認められることから、「財産評価基本通達」による評価額を認めないことには合理的な理由があるとして、納税者側の主張を退けました。
課税当局と、法の抜け穴を鵜の目鷹の目で探す富裕層とのいたちごっこは今後も続くでしょう。