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相続税・贈与税

【VOL.403】 信託の活用

【ボートを漕ぐ税理士通信(ボー税通信) VOL.403】 信託の活用

財産を持っている人は、相続をどうしようとか、生前に贈与しようとか、いろいろ悩むようです(私はその点での悩みはまったく無しですが)。相続にしろ贈与にしろ、渡したいけれども完全に手放すのは心配、というときに、信託という方法があります。

信託とは何でしょうか?
何かを「預ける」場合の登場人物は通常は2人ですが、信託は3人です。
たとえばクロークで荷物を預けるときを思い浮かべると、①預ける人 ②預かる人(クローク) ③番号札を持っている人(=①預ける人であることが基本だが、別の人に変わることもある)、の3人が登場します。このうち③の番号札を持っている人が荷物を引き取れます。

以下、いくつかの事例を挙げます。
【事例1】
「同族会社の株式」を承継する際の家族の問題
①長男が暴走しないか
②長男が先に死亡すると長男の配偶者に相続される
③自分(父親)が死亡した後、配偶者(母親)の老後が心配
⇒ 信託でトラブルを未然に防止する
・長男に贈与した株式を、信託により親が預かる
「受益者指定権等」を親に設定する
・長男が親より先に死亡した場合の次の受益者を親または次男等に指定しておく(信託は遺言に優先する)

【事例2】
Aさんは死亡した後、後妻に賃貸アパートを相続したい。後妻が死亡した後は後妻の親族ではなく、長男に相続させたい。
⇒ 遺言書では指示できない
⇒ 信託で受益権を後妻に相続。信託契約で「後妻が死亡した場合は、次の受益者は長男にする」と指定(受益者連続型の信託)

【事例3】
認知症対策
意思能力がなくなってしまったら、後見人をつけなければならない
⇒ 認知症になる前に、信託により、父の財産の名義を変えれば、父に代わって子が財産を管理することができる
・親の財産を子が預かる(信託)(管理は子が行う)
・受益者を親にする(税務上は受益者=所有者とみなすので課税関係なし)

【事例4】
浪費防止
・受託者が信託契約に従って信託財産(預金)を管理する
・子どもは受益権を有するが、信託財産を自由に消費できず、信託の目的に適った消費しかできない。

などなど、信託契約の形をとることで、いろいろな安心が得られます。財産のある方は検討されてみてはいかがでしょうか。